大判例

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静岡地方裁判所浜松支部 昭和49年(ワ)292号 判決

原告

松下勝男

ほか一名

被告

大橋正昭

ほか二名

主文

被告大橋正昭、同大平砂利株式会社は連帯して、原告松下勝男に対し金二、八九一、九六六円、原告松下ミチ子に対し金二、七四八、九〇二円および右各金員に対する昭和四七年一〇月三〇日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告両名の右被告両名に対するその余の請求および被告浅岡一雄に対する請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用中、原告両名と被告大橋正昭、同大平砂利株式会社との間に生じた分はこれを二分し、その一を原告両名の負担とし、その余を右被告両名の負担とし、原告両名と被告浅岡一雄との間に生じた分は原告両名の負担とする。

この判決は、原告両名勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告両名

「被告らは連帯して、原告松下勝男に対し金七、二七〇、六一六円、原告松下ミチ子に対し金六、五九七、四八一円および右それぞれの金額に対し昭和四七年一〇月三〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決および仮執行の宣言。

二  被告ら

「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決。

第二主張

一  請求の原因(原告両名)

(一)  事故の発生

訴外松下宏(以下宏という)は、次の交通事故によつて死亡した。

(1) 発生時 昭和四七年一〇月二九日午後三時

(2) 発生場所 浜松市東三方町四〇五番地の三地先交差点

(3) 加害車両 大型貨物自動車(浜松一す一一二七号)

(4) 被害車両 自動二輪車(一浜松い七八八二号)

(5) 事故の態様 右日時場所において、被告大橋は加害車両を運転して、三方原町方面より浜北市方面に向けて進行中、右交差点には一時停止の標識があり一時停止をなし、左右の安全確認をなす義務があるにも拘らずこれを怠り、時速約四〇キロで漫然同交差点に進入した過失により、折から右方道路より同交差点に進入してきた宏(当時一七歳)の運転する被害車両をして自車の右側面に激突させた(以下右事故を「本件事故」という)

(6) 結果 その結果、宏は頭蓋底骨折、脳挫傷などの重傷を受け、その場で死亡した。

(二)  責任原因

(1) 被告大橋正昭(以下「被告大橋」という)は、本件事故当時、自己のため加害車両を運行の用に供していたものであり、(自賠法三条本文)、かつ、前記の過失により、本件交通事故を発生させたものである(民法七〇九条)。

(2) 被告大平砂利株式会社(以下、「被告会社」という)は、天竜川砂利採取協同組合の一員で、砂利の販売を業とする会社であるが、被告大橋と砂利運搬について専属的な運送契約を結び、自社の販売した砂利を自車の伝票により、被告大橋に命令し、その販売先に運搬させていた。そしてそのために本件加害車両の車体には「大平砂利(株)」の表示を許容していたものである。

そして本件事故当日被告会社の本社業務や砂利販売は休んでいたが、船岡山の山土販売は営業中で、被告大橋は被告会社から引き受けていた埋立現場へ山土を反復継続的に運搬中、本件事故が発生した。

従つて右被告会社は本件加害車両につき、運行支配及び運行の利益を有するものであるから、自賠法上の運行供用者責任(自賠法三条)を有するとともに、使用者責任(民七一五条)を有するものである。

(3) 被告浅岡一雄(以下、「被告浅岡」という)は、右被告会社の代表取締役であつて、右被告会社と被告大橋が専属的傭車契約をなし、毎日自社の指示により加害車両が被告大橋によつて運行されていたことをよく承知している立場にあり、被告大橋につき、監督をしていた者であるから、民法七一五条二項の責任がある。

(三)  損害

(1) 宏の逸失利益 金一四、〇五二、五七三円

年間給与額 金一、六二四、二〇〇円。

但し、賃金センサス、昭和四八年度第一巻第一表「全国性別・年齢階級別平均給与額表(一般労働者・パートタイム労働者)における男子労働者の「全年齢平均給与額」に依る。

なお、宏は昭和三〇年一月二八日生(当一七年九ケ月)で、事故当時県立引佐高校第三学年に在学中の健康な男子であつたので、昭和四七年簡易生命表によれば同じ年齢の男子の平均余命は五五・一三とされているから、同人はその範囲内で、右高校の卒業の、昭和四八年四月一日(一八歳二ケ月)から、六七歳までの四九年間は、なお就労可能であつた。

生活費控除 五〇パーセント

就労可能年数 四九年但し、一八歳二ケ月より六七歳まで。

中間利息の控除の係数 一七・三〇四但し、ライプニツツ式。

養育費 金五〇、〇〇〇円

但し、事故当時、宏は一七歳九ケ月の高校生で、翌年三月末には卒業し、就職の予定であつた。

それで右高校在学期間中の昭和四七年十一月、十二月、昭和四九年一月二月三月の五ケ月間は毎月約一〇、〇〇〇円の養育費が必要とすればこの養育費の合計金五〇、〇〇〇円が控除されることになる。

計算式

年間給与額1,624,200-生活費50%×係数17.304-養育費50,000円=逸失利益14,052,573円。

(2) 葬儀費用 金二七六、八一五円

原告松下勝男(以下「原告勝男」という)は、宏の葬儀にあたり金二七六、八一五円を支出した。

(3) 墓石費 金二四八、〇〇〇円

原告勝男は、宏のため、その墓石を金二四八、〇〇〇円を支出して建立した。

(4) 法事費用 金二九五、七一〇円

原告勝男は亡宏のために〈1〉死後四九の法事、〈2〉新盆の法事、〈3〉一周忌の法事をそれぞれ宏の有縁の人々の参集を得て行つた。

(5) 慰藉料 原告勝男(父)、同松下ミチ子(母、以下「原告ミチ子」という)いずれも各金二、〇〇〇、〇〇〇円。

宏が本件事故により瞬時に若い生命を奪われ、悲惨な最後を遂げたことは同人自身の苦痛は計り知れないものがあるが、これは他面、右宏の両親である原告らの苦痛である。

宏は原告らの長男として将来の期待は絶大なものがあつたので、同人を亡つた原告らの精神的苦痛は極めて甚大で生涯忘れることは出来ない。

そこで、原告ら各自は被告らより慰藉料として、それぞれ金二、〇〇〇、〇〇〇円をすくなくとも支払われるべきである。

(四)  相続及び原告ら各自の損害

(1) 原告らは宏の父母としてそれぞれ前記(三)(1)記載の宏の逸失利益につき、それぞれ各自金七、〇二六、二八六円を相続した。

従つて原告らの各損害は次のとおりとなる。

原告勝の損害

金九、八四六、八一一円

但し(1) 逸失利益 金七、〇二六、二八六円

(2) 葬儀費用 金二七六、八一五円

(3) 墓石費 金二四八、〇〇〇円

(4) 法事費用 金二九五、七一〇円

(5) 慰藉料 金二、〇〇〇、〇〇〇円

原告ミチ子の損害

金九、〇二六、二八六円

但し(1) 逸失利益 金七、〇二六、二八六円

(2) 慰藉料 金二、〇〇〇、〇〇〇円

(五)  損害の填補

原告らは本件事故後、被告大橋から金一五〇、〇〇〇円(但し、被告大橋はこの金額を自賠責保険金から立替金として、結局自から受取つてしまつた)。

および自賠責保険より金四、八五五、〇〇〇円の右合計金五、〇〇五、〇〇〇円の填補を受けた。

従つてこの填補額を原告らのそれぞれの損害に按分し控除すると次のとおりとなる。

原告勝男の請求額

金七、二七〇、六一六円

但し、按分填補額金二、五七六、一九五円を原告勝男の損害額金九、八四六、八一一円より控除した残額

原告ミチ子の請求額

金六、五九七、四八一円

但し、按分填補額金二、四二八、八〇五円を、原告ミチ子の損害額金九、〇二六、二八六円より控除した残額

(六)  よつて被告らを各自に対し、原告勝男は金七、二七〇、六一六円、原告ミチ子は金六、五九七、四八一円および右それぞれの金額に対し昭和四七年一〇月三〇日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求の原因に対する認否

(一)  被告大橋

請求の原因(一)記載の事実のうち、被告大橋の注意義務速度過失を否認し、その余は認める。

同(二)記載の事実のうち、(1)の過失は否認し、その余は認める、(2)の運行供用者責任および使用者責任は争い、その余は認める、(3)は不知。

同(三)記載の事実は、すべて不知。

同(四)記載の事実のうち、相続関係は認め、その余は不知。

同(五)記載の事実のうち、填補額は認め、その充当関係は不知。

(二)  被告会社、同浅岡

請求の原因(一)記載の事実のうち、(5)の事故の態様および(6)は不知、その余は認める。

同(二)記載の事実のうち、(1)は不知、(2)および(3)は否認する。

同(三)および(四)記載の事実は不知。

同(五)記載の事実のうち、填補額は認め、その充当関係は不知。

被告会社は、本件事故当時、加害車両の運行につきその支配も利益も無していなかつたものであつて、自賠法三条の責任を負ういわれはない。

(1) 被告大橋と被告会社との間には該車両の運行支配を推認出来るような密接な人的関係はなかつたし、被告会社が被告大橋を指揮監督していたとの事実もない。

被告大橋は主に被告会社の依頼を受けて砂利を天竜川砂利プラントより愛知県小坂井の日本ゼニスにまで運搬し、被告会社より運賃の支払を受けていた。その期間は昭和四九年八月二日より同年一一月一九日までである。

又、被告大橋は被告会社より、同社の販売している山土を購入し、顧客に販売していたものであるが、右は被告大橋が買主被告会社が売主であり、純然たる被告大橋個人の仕事であつた。

被告大橋が、被告会社の砂利を運搬するに際しては当日の仕事が終つたときに被告会社に立寄り、翌日の仕事の有無を確認し(或いは被告大橋の自宅に被告会社より運搬依頼の電話により)そのまま加害車両を運転して自宅に持ち帰り、翌日右車両を運転して被告会社に出頭して納品伝票を受取り、天竜川砂利プラントに行つてそこで砂利を積込み、納品先に運搬するという手順であつた。

被告会社としては翌日の仕事について被告大橋がその運搬を引受けたときには同人に必ず該仕事をやつてもらわなければ納品先に対する責任上支障を来たすことになるため、その履行を要求してはいたが、翌日分の仕事を同人が引受けるか否かは自由であつて、同人が自己の仕事を予定している等の為被告会社の仕事を断わることも自由であつたものであり、被告会社と被告大橋の関係は運送依頼者と運送請負人の関係にすぎない。

(2) 車両の所有関係

加害車両は昭和四二年一月一八日静岡日野自動車株式会社より被告会社が購入、同四七年二月一二日被告会社へ所有権が移転し、同年三月二三日被告会社は加茂良二に売却、同年九月二七日右加茂より被告大橋が代金二〇万円で購入したものである。

本件事故当時加害車両の所有者は被告大橋であつた。

(3) 加害車両のボデーの「大平砂利(株)」の表示について

右の表示は被告会社が本件車両を所有していた当時記載されていたもので、本来加茂良二に被告会社が売却した際に抹消されるべきものであつたが、民間車検においては該車両を車検場に持込まなくても書類だけの審査で車検を通ることができるので、車体に表示された名称は抹消されず、新所有者がその表示のされているままの状態で該車両を使用することがあり、本件加害車両の被告会社の名称の表示も右の様な事情に基づくものであつた。

この場合には、被告会社が新たに自己の名称を車体に表示することを許可したものとは異なり、偶々新所有者が旧所有者の名称表示の残存している車両を使用していたものに過ぎないのであるから、その表示のなされた経緯を捨象して、被告会社名称の表示をもつて同会社の該車両に対する運行支配認定の一徴表とみるのは妥当でない。

(4) 車両のガソリン代、修理費、自賠責保険料等は全て被告大橋の負担であつた。

右費用については、被告大橋個人にはその支払の信用が乏しいところから、石油店、自動車修理店の要求もあり、また被告大橋個人の希望もあり、同人へ被告会社が支払うべき運賃より右ガソリン代、修理費を差引控除して石油店、修理店へ支払つていたものであるが、それらの費用の実質的負担者は被告大橋であつた。

(5) 本件事故当日の被告大橋の仕事について

事故当日は日曜日であつて被告会社は休業であつた。

被告大橋は鬼石某に依頼されて埋立て工事を請負いその埋立の為に被告会社より船岡の山土を買つて運搬中に発生した事故であつた。

被告会社の船岡山の山土は買いに来る者には誰れにでも売つている(ダンプ一台分九〇〇円)のであつて、当日は客の要請によつて山土の販売は営業していたものである。

しかし、被告会社の山土販売については、被告会社が売主として顧客である被告大橋に販売していたものであり、被告会社と被告大橋間には山土に関しての運送依頼関係はなく、被告大橋が依頼者より山土代金とその運搬賃を受領することになるにすぎない。

本件事故は被告大橋が第三者の仕事を請負中に発生せしめたものであることは明らかである。

なお、同人は昭和四七年一〇月一日より同月二九日までの間に山土の運搬は日数で一三日、運搬回数で七九回にも及んでいるのであつて、本事故当日たまたま山土運搬に従事していたとはいえないことも明白である。

被告会社と被告大橋との関係が尊属的傭車契約でないことはこの事実からも容易に推認し得る。

(6) 本件加害車両の管理

被告大橋は本件車両を仕事が終ると自宅に運転して持ち帰り、夜間は自己の駐車場に入れて保管していたのであつて被告会社が右車両の格納場所を提供したとか、被告会社と被告大橋で右車両の維持、管理について何らかの話合いがあり、それに基づいて被告大橋が保管していたものであるという事情は全く無く、本件車両の保管は被告大橋の責任においてなされていたものである。

右の各事実を総合判断すれば被告会社は本件加害車両の運行供用者でもないし、被告大橋との間に雇用関係ないし、それと同視しうるような指揮監督的関係もなかつたものである。

被告浅岡一雄については、被告会社が本件加害車両の運行供用者でもなく、被告大橋の使用者でもない以上民法七一五条二項代理監督者責任を負ういわれのなきものである。

三  抗弁

(一)  被告大橋

(1) 宏は速度違反の前歴を有しそのスリツプ痕跡から推定しても相当な高速で進行していたものと思われる。すなわち、本件道路はアスフアルト舗装・勾配なし・路面平担乾燥の状況にあり被害車両の制動こんの長さが三五・五メートル記されているから毎時八〇乃至九〇キロメートルの推定時速が算出され、これを毎時八〇キロメートルとすると、毎秒二二・二メートルとなる(以下二二メートルとする)。

(2) 被告大橋は「交差点の手前で一〇キロメートル位に減速し交差点を通過し終る頃は二五キロメートル位になつていた。」というから中間値をとつて毎時一七キロメートルの速度とすると、毎秒四・七メートルとなり、被告大橋が左右を確認した地点から被害車両と衝突した時位置していた地点との距離が一四・四メートルあるからこの間を走行するのに三・〇一秒を要することになる(以下三秒とする)。

(3) 右12を基礎とした場合被加害車両の位置関係は次のようになる。

イ 衝突一秒前即ち加害車両が衝突地点に達する直前には被害車両は衝突地点から北方二二メートル附近にいることになる。

ロ 衝突二秒前即ち加害車両が交差点に入る直前には被害車両は衝突地点から北方四四メートル附近にいることになる。

ハ 衝突三秒前即ち加害車両が左右を確認している時には被害車両は衝突地点から北方六六メートル附近にいることになる。

(4) 右から次のことが結論ずけられる。

イ 被告大橋が「………交差点の手前で一〇キロ位に減速して左右を見ましたところ左右の道路の交通が無かつた………」というのは事実に符合している。

ロ かりに被告大橋が停車したとしても被害車両を認識することは不可能である。

ハ 本件の場合被告大橋に課せられている注意義務は停止の上左右の車両の有無を確め、進行車両がある場合には同車との衝突を避けうるよう運転すべき義務である。ところが被告大橋は右イロで述べたとおり左右から進行してくる車両の有無を確めるべく動作しかつ車両の不存在を認識し、事実車両も存在しなかつたのであるから右注意義務の懈怠の責はない。

ニ 反面宏は毎時五〇キロメートルの速度制限に違反している上、本件交差点を通過するには「たとえ左右の道路(即ち本件では加害車両の進行路)に一時停止の標識があつても不測の衝突を避けるため、その手前でいつも停止しうるような速度に減速して徐行し左右の交通の安全を確認して進行すべき義務がある」のにこれを怠つている。

(5) 本件事故は宏の一方的な過失によつて発生したものであり、被告大橋が「私が一時停止して左右の道路の安全を確認していれば起きなかつた」という自白のみを理由として致死の刑事処分がなされたのは不可解というべきである。

(6) 仮りに被告大橋に過失があるとしても、宏にも重大な過失があるから過失相殺がなされるべきである。

(二)  被告会社被告浅岡

仮りに被告会社に運行供用者責任または使用者責任、被告浅岡に代理監督者責任があるとしても、本件事故は宏の一方的過失によつて発生したものであつて被告大橋には何らの過失も存しない。

すなわち、本件加害車両は衝突により、左後輪の前部、荷台下方に設置されている燃料タンクがわずかに凹んだ程度であるのに対し、宏の運転する自動二輪車はスリツプ痕三五・五メートルを残して正面より本件加害車両の側面に衝突して大破し、宏は衝突地点より六・二メートルの路上に投げ出されて全身を強打したもので時速八〇キロメートル前後の高速で走行してきたものである。

一方被告大橋は本件加害車両を運転し、交差点手前で時速一〇キロメートル位に減速し、左右確認した後、二五キロメートルに加速したものであるから、宏において時速五〇キロメートルの法定速度内で走行していたならば、本件加害車両の手前で停止できたものと推測され、宏に高速走行および徐行義務違反の存することが明らかである。

また本件加速車両は先に交差点内に進出した先順位車両であるから、宏において前方注視を尽していれば本件加害車両が交差点に進入してくるのを確認できた筈であり、宏には当然徐行して事故の発生を未然に防止すべきであるのにこれを怠つた過失がある。

本件事故は、右のように宏の法定速度制限違反および徐行義務違反の過失にもとづくもので被告大橋には過失がない。

仮りに被告大橋に過失があるとしてもその程度は軽微であり、宏について大幅な過失相殺がなされるべきである。

四  抗弁に対する認否(原告)

抗弁(一)および(二)記載事実はすべて争う。

(一)  宏の運転する自動二輪車のスリツプ痕は、三五・五メートルで一条であつたことが明瞭である。このようにスリツプ痕が一条の場合には一輪のみブレーキがかかつて路面を滑走し、他の一輪はただ転動しているのみと考えられ、そしてこの場合、二輪車では前輪に急制動をかけると転倒の危険があるので、右のスリツプ痕を残すのは後輪であることが多い。

そして、スリツプ痕が一条の場合におけるに「スリツプ痕の長さ」から「制動初速度」を推定すると

(イ) スリツプ痕三四メートルのときは時速五五キロメートル。

(ロ) スリツプ痕四〇メートルのときは時速六〇キロメートル。

宏の自動二輪車は、ブレーキをかけてから「三五・五メートル」も転倒せずに直線に進行し大型ダンプの左側面のボデイ前部で後輪の前に取付けられている燃料タンクに衝突している。

右のスリツプ痕三五・五メートルの事実によると、本件の自動二輪車の推定速度は、本件事故現場の当時の制限速度時速六〇キロメートルの範囲内の「五七ないし五八キロメートル」しか出ていなかつたものと推定できる。

このことから本件において宏は制限速度違反の過失はなかつたことが強く推定できる。

(二)  過失割合について

本件は、交差点の事故であるが、過失割合を考えるための基本としては優先道路を進行する自動二輪車(被害車両)に、そうでない道路から、一時停止の標識を無視して進入した大型ダンプ(加害車両)が衝突した事故と思われる。

本件の自動二輪車が進行した道路(交差道路)は、その幅員は六・六メートルであるが、この地方では通称満州道路と呼ばれる幹線道路で、自動車通行量も比較的多い道路であり、アスフアルト舗装をされた時期も早く、道路の中央にはセンターラインが引かれている。

それに較べて本件加害車両が進行してきた道路(進入道路)は、その幅員は六・五メートルであるが、この地方の主要道路ではなく、交通量も極めて少なく舗装された時期もおそい。そして本件現場の交差点には一時停止の標識および一時停止ラインが明瞭に表示されている。

従つて右の自動二輪車の進行道路(交差道路)が優先道路であることは極めて明瞭である。

右の事情のもとに優者危険負担の原則など加味して、本件を考えると、基本的には自動二輪車・一〇パーセントに対し、大型ダンプ九〇パーセントの過失割合が考えられる。さらに修正要素として大型ダンプを運転する被告大橋の一時停止義務違反、左右安全確認義務違反などのミスをいわゆる重過失と評価し、自動二輪車を運転する訴外宏の交差点進入に当つての徐行義務違反(前述のとおり制限速度違反はない。)をいわゆる著しい過失と評価して、考察するも、右過失割合(九〇対一〇)は変らない。

従つて、以上本件の過失割合を考えてくると、原告の損害請求に対する過失相殺率は、最大限度一〇パーセントを超えてはならないものである。

第三証拠〔略〕

理由

一  昭和四七年一〇月二九日午後三時浜松市東三方町四〇五番地の三交差点において宏運転の自動二輪車と被告大橋が自己のため運行の用に供していた大型貨物自動車とが衝突した本件事故により宏は頭蓋底骨折脳挫傷などの重傷を受けその場で死亡したことは当事者間に争いがない。

二  被告大橋は自己のために本件加害車両を運行の用に供する者であるから自賠法三条但書の証明をしない限り本件事故によつて生じた損害を賠償する義務があるが、原告は被告会社も本件加害車両につき運行支配および運行の利益を有するから運行供用者責任ありとし、また被告浅岡は被告会社の代表取締役としていわゆる代理監督者責任ありと主張し、右被告らはこれを争うのでまずこの点について判断する。

(一)  原告と被告会社との間で成立に争いのない甲第一二号証同第一四号証の一ないし四、同第四三、第四四号証、乙第三、第四号証、証人増谷朝夫の証言により真正に成立したものと認められる乙第一号証の一、二、同第二号証の一ないし五、証人増谷朝夫、同戸塚竹雄、同村瀬茂の各証言、被告大橋正昭(第一、二回)および被告浅岡一雄各本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。

(1)  被告会社は、砂利、砂などの採取販売、土木建築工事の請負などを業とする株式会社であるが、採取した砂利などの運搬の業務を執行するため、大型貨物自動車を保有し従業員である運転手にこれを運転させるほか、被告会社の運転手に被告会社保有の大型貨物自動車を譲渡して独立させ、売買契約と同時に被告会社を発注者、買受人を受注者とする砂利運搬取引契約を締結して処理してきた。

右取引契約は、「砂利運搬は、発注者がその業態に応じ毎日納入先別に車両配車を行い受注者はこの配車計画に基き運搬する。運賃の計算は、毎月二〇日締切とし発注者が定める納入先別仕切単価により運賃計算する。支払方法は、毎締切月の翌月二五日を支払日とし現金又は手形決済する。受注者は常に発注者の指図に従い、無断欠車又は運搬拒否等苟しくもその業務上配車に支障を来たし、或は対外的信用を失遂するような行為があつてはならない。発注者は砂利取引において同業界一般に需給変動が甚だしいため受注者の稼高についてはその多寡に関し責任を負わない。契約期限は特に定めないが、受注者が本契約に違背したとき発注者は直ちにこの契約を解除し、損害あるときは即時弁済請求することができる。受注者はその所有車両の修繕又は燃料補給等について、特に発注者が承諾した場合に限り発注者が指定する工場又は商店において行うことができる。但し費用はその月の運賃稼高より差引勘定し不足するときは受注者において残金を支払うこと」を内容とし、不動文字の契約書を作成するのが通例であり、同時に締結される自動車の売買契約では代金は右取引契約にもとづく稼高から分割して支払う形式をとつてきた。

(2)  被告大橋は、昭和四六年一一月被告会社に運転手として雇用され、被告会社保有車両を運転してきたが、昭和四七年一月一一日被告会社より購入して間もない本件加害車両を譲受けて独立し、前記(1)と同内容の売買契約および砂利運搬取引契約を締結した。

被告大橋は右契約にもとづいて被告会社の砂利運搬を行つてきたが、同年二月被告会社の承諾を得て加茂良治に本件加害車両を譲渡し、右運搬取引契約における受注者の地位も承継させた。

しかし被告大橋は、同年八月再び加茂良治から本件加害車両を譲受け、被告会社の承諾を得て再度従前の砂利運搬を開始した(なお本件加害車両は昭和四七年三月二三日静岡日野自動車株式会社より被告会社へ登録移転し、同年九月二七日被告会社より加茂良治に登録移転されている)。

(3)  被告大橋の日常の業務は、前日に被告会社営業担当の増谷朝夫の配車指示を受け、当日天竜川砂利組合が採取権をもつ採取現場に赴き被告会社のチケツトを砂利組合に渡し、砂利を採取して本件加害車両に積載し被告会社の指示する場所に運搬することであつて、その内容は当初の契約締結当時と全く同一である。

被告大橋は、右のほか、被告会社の右業務が途絶えたときや、右業務が休日のときには、被告会社が経営する通称船岡山の山土採取現場から山土を継続的に買受け、被告大橋への注文先に運搬して転売し、右山土代金は本件加害車両の修理費とともに被告会社から被告大橋に支払われるその月の運賃稼高より差引勘定していた。

(4)  本件加害車両の車体には、昭和四七年一月一一日被告大橋が最初に買受けたときから本件事故当時まで継続して「大平砂利(株)」と左右に表示されており、被告会社はこのことを承知しながら何ら抹消などの指示をしなかつた。

(5)  本件事故当日、被告会社の砂利運搬業務は休業していたが、船岡山では山土販売を行つており、被告大橋は右山土を買受けて本件加害車両で反覆運搬中本件を惹起したものである。

以上の事実が認められ、ほかに右認定を動かすに足りる証拠はない。

右の事実によれば、被告大橋は砂利採取販売業などを営む被告会社に運転手として勤務しその後被告会社所有の大型貨物自動車(本件加害車両)を譲受けて独立し、一旦これを加茂良治に譲渡したものの、再び右自動車を譲受け被告会社名を表示した右自動車を使用して専属的に被告会社の砂利運搬を受注してきたものであり、本件事故の際は、被告大橋が被告会社より買受けた山土運搬のために本件加害車両を使用していたものであるが、右山土運搬も被告会社の事業と密接に関連しており、本件事故当時の運行は、客観的外形的に被告会社のためにする運行と解するのが相当である。

被告会社は被告会社と被告大橋との間には指揮監督の関係なく、本件加害車両は被告大橋の所有であり、車体の表示も偶々残存していたにすぎず、その管理についても被告会社が何ら関係していないこと、また本件事故は被告大橋が誰れでも自由に買受けることのできる山土を運搬する際の事故で被告会社との請負関係はないことなどを主張して被告会社が運行供用者でない旨主張する。しかし被告会社主張のように直接指揮監督関係がなく、本件加害車両は専ら被告大橋において管理してきたとしても前記認定のとおり本件加害車両がもと被告会社所有でその砂利運搬のため従業員に売渡し独立させて専属的な砂利運搬取引契約を締結し右契約にもとづいて被告会社の砂利をその指示に従つて運搬させてきたもので、被告大橋を実質的に自己の被用者と同様に利用し、結局被告会社は本件加害車両の運行について実質上支配力を有し、その運行による利益を享受していたものというべきである。なお、前掲乙第四号証(被告会社と被告大橋との砂利運搬取引契約書)には「47・3・1契約解除」と記入され、証人戸塚竹雄は同日をもつて被告大橋との契約は解除された旨供述しているが、かかる意思表示がなされたことを裏付ける証拠はなく、また前記認定のように本件加害車両は被告会社より被告大橋、加茂良治、被告大橋と譲渡されたが、その間加茂、被告大橋は一貫して継続的に右契約内容と同一の形式態様で被告会社の砂利運搬に従事しており、当初の契約は被告会社との黙示的な合意により所有権移転に伴つて所有者に承継されたものとみるのが相当である。また本件事故は、被告大橋が被告会社より山土を買受け運搬中に発生したものであり、右運搬について両者間に請負契約がないことは疑いないが、右山土は誰れでも自由に購入できるものであるとしても被告大橋の山土買入運搬は、被告会社の砂利運搬が行われないときに被告会社の山土採取場から買入れた山土を車体に被告会社名を表示した本件加害車両で運搬し、被告会社との砂利運搬取引契約の運賃稼高と山土購入代金と相殺勘定される方法によつて行われているもので、被告大橋の本件事故時における本件加害車両の運行と被告会社の事業とは密接不可分であつて被告会社は、本件事故の際にも本件加害車両運行についての実質上の支配、運行による利益を失つていないというべきである。

従つて被告会社は自賠法三条にいう自己のために本件加害車両を運行の用に供するものに該当するというべきである。

(二)  証人増谷朝夫、同戸塚竹雄の各証言および被告大橋正昭(第二回)、被告浅岡一雄各本人尋問の結果によれば、被告会社においては、本件事故当時、被告会社保有車両および前記砂利運搬取引契約における受注者の車両の運行管理は従業員の増谷朝夫が担当し、右受注者との契約締結経理関係などは従業員の戸塚竹雄が担当しており、被告浅岡は従業員の監督や受注者への指示代金決済などをこれらの従業員に任かせ、直接関与せず、一週に三、四日短時間出社して総括的な業務処理を行つていたことが認められ、ほかに右認定を動かすに足りる証拠はない。

そして民法七一五条二項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的にみて現実に使用者に代つてその業務執行を指揮監督する立場にあることを要するところ、右事実によれば、被告浅岡は被告会社代表者として増谷朝夫、戸塚竹雄を通じて間接に指揮監督していたにすぎないから被告浅岡に代理監督者責任は存しない。

従つて被告浅岡に対し、本件事故による損害賠償金の支払を求める原告の本訴請求は、その余について判断するまでもなく理由がないというべきである。

三  そこで被告大橋および被告会社の無過失および過失相殺の抗弁について判断する。

成立に争いのない甲第八ないし第一三号証、被告大橋正昭(第一回)本人尋問の結果によれば、被告大橋は、本件加害車両を運転して浜松市三方原町方面より浜北市方面へ向つて幅員六・五メートルの道路を東進し、本件交差点にさしかかつたが、本件交差点の被告大橋進路には一時停止の標識が設置されていたこと、しかるに被告大橋は、左右道路は通称満州道路と称し相当の速度で通行する自動車が多いことを知りながら、交差点手前で時速約一〇キロメートルに減速して左右を確認しただけで左右道路の通行はないものと軽信し、一時停止することなく加速して交差点に進出し時速約二五キロメートルで車両後尾が左右道路のセンターラインを越えた地点付近に至つたとき車両左後輪の前部、荷台下方に設置されている燃料タンク付近に宏運転の自動二輪車の前部が衝突したこと、一方宏は自動二輪車(総排気量二五〇cc)を運転し浜松市都田町方面から葵町方面に向つて幅員六・六メートルの道路を南進し、時速六〇キロメートルを相当上廻わる高速度で本件交差点にさしかかつたところ、先に交差点内に進出している本件加害車両を発見し急制動の措置を講じたが、路上に三五・五メートルのスリツプ痕を印して右のとおり被告大橋運転の本件加害車両と激突し路上に投げ出され、約六・二メートル東寄りの地点に転倒して全身を強打し、自動二輪車は大破したこと、以上の事実が認められる。

被告大橋は、本人尋問(第一回)において、一旦停車し左右を確認してから発進した旨供述している。しかし前掲甲第八号証、同第一二号証、同第一三号証によれば、被告大橋は事故直後実の況見分時より警察官、検察官の取調べまで一貫して減速はしたが一時停止しなかつた旨供述しており、右本人尋問の供述と矛盾し、右本人尋問に格別信憑性を認むべき証拠上の根拠も存せず、到底措信することができない。

また被告大橋は一時停止しても事故の発生は避けられなかつた旨主張するが、完全に一時停止のうえ左右を確認すれば停止確認発進に要する時間と宏運転の自動二輪車の進行という時間的経過に照らしても高速で進行する宏運転の自動二輪車は被告大橋の発進前に交差点を通過するか、少なくとも高速で接近してくるのを容易に発見し得たものと認められるから被告大橋の右主張は採用できない。

さらに原告は、宏運転の自動二輪車の時速は五七ないし五八キロメートルしか出ていなかつた旨主張する。そして成立に争いのない甲第四八号証によれば、自動二輪車の制動距離はブレーキ痕が一条の場合には時速五五キロメートルで三四・〇二メートル、時速六〇キロメートルで四〇・四八メートルの記載がある。しかし右は一輪制動を前提とするところ、本件では前輪にも制動した(そうであればスリツプ痕の長さの割合に比して時速は増大する)可能性がないとはいえないし、右記載をそのまま本件事故にあてはめて考察しても、宏運転の自動二輪車は路上に三五・五メートルのスリツプ痕を印して停止したのでなく、その地点で本件加害車両の前記燃料タンク付近に激突し、路上に投げ出され、自動二輪車は大破しているのであつて、その状況に照らし、時速六〇キロメートルを相当こえる高速で進行していたことは疑う余地がない。

そしてほかに右認定を動かすに足りる証拠はない。

右の事実によれば、被告大橋には、道路標識により一時停止すべきことが指定されているにも拘らず、道路交通法四三条に定める一時停止の義務に違反して交差点に進出した過失があり、一方宏は前記認定事実に照らし、本件加害車両が先に交差点に進入していたのに拘らず前方の注視を怠つてその発見が遅れ、かつ道路交通法施行令一一条同法施行規則五条の二で定められた法定速度五〇キロメートルをこえる相当な高速度で進行していたために適切な避譲措置を講ずることができなかつた過失があり、その過失の割合は、原告四、被告大橋六と認めるのが相当である。

四  そこで損害賠償額について判断する。

(一)  逸失利益

成立に争いのない甲第一号証、同第一五号証、原告松下勝男本人尋問の結果によると、宏は父原告勝男、母原告ミチ子の長男として昭和三〇年一月二八日出生し、本件事故当時県立引佐高校農業科三年に在学中であり、健康に恵まれていたこと、高校卒業後は一年間畜産関係の牧場で研修したのち家業の養豚業を営む予定であつたことが認められるところ、厚生省昭和四七年簡易生命表によれば、満一七年の男子の平均余命は五五・一三年であり、高校卒業後四九年間は就労可能であると推認される。そして昭和四八年度労働省統計情報部賃金センサス第一巻第二表によれば、高校卒業の学歴を有する男子労働者の昭和四八年度全産業の平均年間給与額は金一、五四二、二〇〇月(一ケ月間平均賃金一〇一、二〇〇円、年間の賞与その他の特別給与額金三二七、八〇〇円)であるところ、同人の生活費として収入の五割を控除するのが相当であるからこれを控除した額に無職者で満一七年の者の就労可能年数のライプニツツ係数一七・三〇四を乗ずると金一三、三四三、一一四円となるが、これに本件事故当時から高校卒業予定の昭和四八年三月までの五ケ月間原告両名が宏を養育する費用として合計金五〇、〇〇〇円を控除すべきであるから、逸失利益額は金一三、二九三、一一四円と認定するのが相当であり、原告両名は父母として各二分の一にあたる金六、六四六、五五七円を相続する。

(二)  葬祭費用

原告松下勝男本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一七号証の一、二、同第一八ないし第四二号証および原告松下勝男本人尋問の結果によれば原告勝男は宏の葬儀費用として金二七六、八一五円、墓碑建立費用として金二四八、〇〇〇円、法事費用(四九日新盆、一週忌の各法事)として金二九五、七一〇円合計金八二〇、五二五円を支出したことが認められるところ、右金額のうち金四五〇、〇〇〇円が社会通念上本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

(三)  慰藉料

前記認定の被害者宏の年齢、同人と原告両名の身分関係その他以上認定の諸般の事情を斟酌すると、原告両名の慰藉料は各金二、〇〇〇、〇〇〇円をもつて相当とする。

従つて本件事故によつて蒙つた損害額は、原告勝男金九、〇九六、五五七円、原告ミチ子金八、六四六、五五七円であるが、宏には前記三認定の過失があるから、右過失を損害賠償額を定めるにつき斟酌すると、右損害額の一〇分の六にあたる金額、すなわち、原告勝男金五、四五七、九三四円、原告ミチ子金五、一八七、九三四円に限つて賠償を求め得べきところ、原告両名が被告大橋から金一五〇、〇〇〇円、自賠責保険金より金四、八五五、〇〇〇円の填補を受けたことは当事者間に争いがないから、これを原告両名の請求し得べき損害額に按分すると、残額は原告勝男金二、八九一、九六六円原告ミチ子金二、七四八、九〇二円である。

五  よつて原告両名の本訴請求は、被告に対し、原告勝男については金二、八九一、九六六円、原告ミチ子については金二、七四八、九〇二円およびこれらに対する本件事故発生の日の翌日である昭和四七年一〇月三〇日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当としてこれを認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田稔)

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